2008年12月05日

非正規雇用3(非正規雇用と労働保険)

昨日は、非正規雇用と社会保険(健康保険、厚生年金保険)の関係についてふれましたが、今日は、労働保険(雇用保険と労災保険)との関係について考えていきたいと思います。

労働保険は、雇用保険と労災保険のことを指しますが、労災保険は、個人単位ではなく、事業所単位での加入となりますから、「未加入」という問題はあまり起きません。ただし、「労災隠し」といって、労災が起こったのに、そのことを労働基準監督署に届け出なかったりする例は少なくはありません。
「労災隠し」は、犯罪にも当たる行為ですから、速やかに労働基準監督署には届け出る必要があります。


非正規雇用で、特に問題となるのが、雇用保険の未加入です。

現在、自動車大手メーカーによる非正規雇用を中心とした人員削減が、新聞やテレビなどで大きくクローズアップされていますが、この、雇用保険のみ加入問題が関係してくると、問題は深刻化してきます。

実際、本日の新聞でも1面で取り上げられていましたが、、雇用保険法の改正案が提出され、雇用保険の加入条件が緩和されることが明らかになりました。

このこと自体は、良いことではありますが、私自身の意見としては、「問題」となってからでは、少し遅いのではないかと感じます。

現在の、雇用保険の被保険者の加入条件は以下のようになっています。
1.一般被保険者
1年以上引き続き雇用されることが見込まれ、1週間の所定労働時間が20時間以上の者であって、2、3以外の被保険者のこといいます。
ただし、65歳に達した日以後に新たに雇用される者を除きます。

2.短期雇用特例被保険者
季節的に雇用される者(4ヶ月を超える期間で雇用される者に限る)または短期の雇用に就くことを常態とする者。1週間の所定労働時間が20時間以上の者に限ります。

3.日雇労働被保険者
日々雇用される者または30日以内の期間を定めて雇用される者であって次のいずれかの要件を満たす者です。
適用区域内に居住しており、雇用保険の適用事業に雇用される者
適用区域外に居住しているが、適用区域内の雇用保険適用事業に雇用される者
厚生労働大臣の指定する適用区域外の雇用保険の適用保険事業に雇用される者
上記以外の日雇労働者で、公共職業安定所長の認可を受けた者

4.高年齢継続被保険者
同一の事業主の適用事業に、65歳に達した日前から引き続き65歳に達した以後も雇用されている者であって、短期雇用特例被保険者または日雇労働被保険者に該当しない人のことをいいます。

以上の条件のうち、一般被保険者の「1年以上」、「20時間以上」という部分が、非正規雇用と大きく関わってきます。
この条件があるために加入できない人が多数出てくるのです。

また、実際には、1年以上働いているのに、雇用保険に加入できない場合もあります。
1年未満の契約を更新するというケースです。

あくまで、私個人の考えですが、厳しく言えば、これは、「非正規雇用」ということを悪用されている気がしてなりません。
つまり、本来は、1年以上の雇用を見越しているのに、雇用保険の保険料負担削減を目的として、この「1年以上」要件が利用されているというものです。

このことは、今後、社会問題にさえ発展しかねません。雇用保険に加入していないということは、失業したとしても、その生活保障が受けられないことを意味しているのですから。

こうした現実を踏まえて、今回の雇用保険改正案は、来年の通常国会で出されるそうです。雇用保険の加入要件は、現行の1年以上から6ヶ月以上に緩和されるとのことです。

今後、もっと、雇用保険の加入は、国として進めてもらえたら・・・と思います。もちろん、事業主の労働保険負担の困難さについてもあわせて検討する必要があるとも思いますが…。



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